豊富温泉~その後の経過~2週間後
温泉に入り始めて2週間程すると、明らかに効果が現れてきた。
はじめに良くなったのは、顔。
ガサガサで、およそ艶なんてなかった彼の顔が、艶やかになってきた。
背中の突っ張ったような状態は相変わらずだったけれど、
温泉に入りたがる回数は減り、朝昼夕の一日3回程のペースが出来上がってきた。
疲れて散歩も億劫がっていた彼が、体を動かしたいと言い始めた。
湯の花荘からふれあいセンターまでサッカーボールを蹴りながら通い、
湯の杜ぽっけでレンタサイクルを借りて、近くまでサイクリングしたり。
近くのスキー場では、夏場だけ、たいやきやケーキなどのスイーツや食事を楽しめる
お店が出店していて、散歩がてら食べに行ったり。
来たばかりの頃の先の見えない不安な状態から、ホット一息し、少しづつこれからのことについて考える余裕が出てきた。
一時より良くなって来たとはいえ、まだまだ完治には程遠い。
予定通りの滞在期間だとあと2週間程。
ちょうど良くなる直前に帰ることになるのではないか?
湯治の方の話では、乾癬の方は比較的症状が治まる期間が短く、
アトピーの方が時間がかかるらしい。
せっかく良くなりかけたのに、戻ってしまっては意味がないのでは?
今後のことについて迷っていた私に次男が言った。
「帰りたくない。むこうに帰ってまた痒い思いをするのは、嫌だ・・・。」
「本当に?本当に帰りたくないの?こっちに住んでもいいの?
こっちの学校に転校してもいいの?仲良しのお友達と別れてもいいの?
お兄ちゃんとも別れちゃうよ?」
半信半疑だった私に彼は迷わず言った。
「帰りたくない。」
子供の言葉を真に受けて良いのか?
果たして現実的にそんな事が可能なのだろうか?
だけど、大好きなお兄ちゃんやお友達と離れても、この見ず知らずの土地に
住みたいと思うほど、彼にとって自分の生まれ育った場所は辛かったのだ。
このまま帰る訳にはいかないと言う思いと、そうは言っても長男はどうするのか?
年老いた親たちに何かあっても戻れる距離じゃないし・・・。
そんな時、ふれあいセンターの廊下の張り紙が目に入った。
温泉湯治留学モニター募集。
豊富温泉へ湯治留学を考えている人向けの体験制度。
2週間から1ヶ月の期間。
湯治留学の条件として、このモニター制度を利用することが条件の一つになっていた。
なら、今回のこの滞在をそれに当てることは出来ないか?
滞在日数がギリギリ2週間ほどになっていたので、その足でコンシェルに向かった。
担当は豊富町教育委員会ということで、コンシェルの方が電話するとすぐに
教育委員会の方がコンシェルまでいらしてくださって、湯治留学制度について、
モニター制度について説明してくださって、湯治留学について現実的に考えるための
第一歩を踏み出した。